こんにちは。クレエニイガタの高橋です。
CREER Niigataサイトのテーマは「つながる、ひろがる、私の世界」。
このインタビュー企画は、気になるあの人に話を聞き、その人の物語をたどりながら、自分自身の“内なる声”も見つけていく。そんな場所にしていきます。
初回にお話を伺ったのは、アーティストのAnnie Lena Obermeier(アニー・玲奈・オーバマイヤー)さん。
車中泊で全国を旅しながら絵を描き、とあるご縁をきっかけに、弥彦村の築230年余りの古民家で1年間暮らしながら制作を続けていました。
自分の言葉で真っ直ぐに話す姿と、思わずつられてしまう弾ける笑顔!初めてお会いした時から、「自分を生きている人だ!」と感じました。さらに印象的だったのは、Annieさん自身もまた、旅を通して出会った人たちの生き方や物語を聞き、一冊にまとめていたこと。運命めいたものすら感じながら、今回のインタビューをお願いしました。
少し前置きが長くなってしまいましたが、前編では、Annieさんが弥彦で過ごした1年を通して見つめてきたこと、感じたことを聞きました。

Q まずは、Annieさんが弥彦で暮らすことになった経緯を教えてください。
最初に新潟へ来たのは、免許合宿でした。その時、知人も新潟市にいて、地元の方とのごはんに誘ってくれたんです。そこで「今度、新潟で個展をしてよ」と声をかけていただいて。
その後、個展のために新潟へ向かう途中、偶然見つけた弥彦の飲食店に立ち寄ったら、そこのオーナーがその場でInstagramを見て、「店内に壁画を描いてほしい」と言ってくださったんです。本当にすてきな空間なので、「いいんですか!? 私が……?」と聞き返したくらいです(笑)。
2023年9月に壁画を描かせてもらって、その後も旅を続けていたら、1年ほど経った頃に「弥彦でアーティスト・イン・レジデンスを始めるから住まない?」と連絡をいただいて。
ちょうど日本一周を終えて、どこかに腰を据えたいと思っていた頃だったし、弥彦の空気もずっと心に残っていたので、二つ返事で「住みます!」と答えました。
本当にラッキーなんですよね、私(笑)。
Q Annieさんにとって、旅ってどんなものなのでしょうか。
「旅は人生。人生は旅」だと思っています。私はもともと自己否定が強くて、人との関係もうまくいかない時期が結構あったんです。ずっと「“何者か”にならなきゃ」って、焦っていて。そうじゃないと、自分がここにいることをゆるしてもらえない気がしていました。
だからなんだか元気が出なくて、自分自身を癒やしたいという気持ちが、旅に出ることにつながったんだと思います。環境も、時間の使い方も、人付き合いも変わり続けるなかで、「自分はどう変化していくんだろう」って知りたかった。
旅のなかでは、ただそこにいるだけで喜んでくださる人たちに出会いました。その時初めて、「生きていること自体が素晴らしいんだ」って思えて、同時に救われる気持ちにもなって。旅が教えてくれた、大切な宝物です。

Q 弥彦で過ごした1年は、どんな時間でしたか?
この先の人生で、お守りみたいな存在になると思える時間でした。
弥彦の澄んだ空気と、このお屋敷の静かな空間で、瞑想のような時間を過ごしました。SNSも断って、ひたすらジャーナリングをして。とにかく絵筆を走らせると、逆に絵の方が語りかけてくることもあったんです。
身体的には旅をしていませんでしたが、心は最も深く旅をしていました。
そして無事に個展を迎えて、人に見ていただくことがこれほどうれしいものだと初めて知りました。センシティブな内面を描いた作品は今回初めて人前に出したのですが、「これが一番好きです」と言ってくださる方もいて。
本当に表現したいものを出していいのだと、安堵することができました。
Q 1年前と比べての心境・そして描くことへの変化は?
自分が目指したい姿は「自由で軽やかであること」なんだって気づきました。これまでは、知らず知らずのうちに制限していたんですよね。「そんなの描いちゃだめ」とか、「こうあるべき」とか。その理由を1年かけて、一つ一つ拾い上げて。徐々に「描いていいんだよ」って、自分をゆるせるようになっていきました。
内面の変化につれて、絵も変わっていきましたね。今回の個展がバラエティにあふれすぎているのも、まさにその影響で(笑)
ずっと「スタイルを持たないことがスタイル」って言い続けてきたんですけど、正直どこか自信がなかったんです。でも、これだけの数を描いてきたら胸を張って言えるようになりました!

Q 続々と絵の迎え先が決まって、どんな心境ですか?
「良かったね」って声をかけています。
自分の描いた絵は、どれも本当に好きなんですよね。でも、残念ながら全員を自分の家の壁に掛け続けることはできないから。ましてや私、家がないし(笑)。
迎え先が決まると、「この子はこれから、その人のそばで息をしていくんだな」って思うんです。
感覚としては、お嫁に出すみたいな感じかも(笑)。かわいい子たちが、新しい場所へ旅立っていく。私自身は行けなくても、この絵たちが旅を続けてくれると思うと、それはすごくロマンがあるなって思います。私の知らない場所で、また新しい物語が生まれていくので。
タンポポの綿毛を、ふっと飛ばすような気持ちですね。

旅の道中、人と人とのつながりに導かれるようにして、弥彦へたどり着いたAnnieさん。
1年間のアーティスト・イン・レジデンスの活動のなかで、これまで蓋をしてきた感情に向き合い、自分の拙さや弱さも受け止めながら、作品へと昇華していった時間がありました。
後編では、Annieさんの生き方について、もっとお話を聞いていきます!
アーティスト・Anneさん「自由をまとって、自分を生きる」(後編)はこちら
PROFILE

Annie Lena Obermeier
1995年、京都府出身。大学卒業後、フリーでアートやデザインを制作。2023年からは車で全国を旅しながら創作を続け、企画・取材・執筆・アートワークまで手がけた『LAMPPOST:生き方は働き方』『LAMPPOST:人間的生き方探究録』を出版。2025年6月より、弥彦村の国登録有形文化財「旧鈴木家住宅」を拠点としたアーティスト・イン・レジデンスに参加し、約1年間を過ごす。滞在中に生まれた作品と出合える個展「Still Alive」を、2026年6月7日まで開催。
Instagram @annielenaobermeier